2012年3月17日土曜日

デザイン料金回収の顛末


 法律なんて当てにならない。
 自分の身は自分で守るべし。


有難いことに、年明けから忙しく、なかなかブログを更新できずにおりました。
以前、フェースブックでご相談した、未払いのデザイン料金を無事回収したことをご報告します。
アドバイスを頂いた皆さん、ご心配頂いた皆さん、ありがとうございました。


結論から先に書くと、現在の法律は、料金を払わずゴネる方の味方です。
自分の身は自分で守れるように、仕事を始める前に自衛手段を取っておくべきだと痛感しました。
その理由として、苦労して裁判で勝っても、強制執行の権限が与えられるだけだからです。 
これはどういうことかと言うと、強制執行のお墨付きを公的に得られるだけで、
それから先の強制執行は自らの費用で手配し、自らの手で行わなければならないからです。

 

強制執行とは、相手の財産を差し押さえ、裁判所で財産を換価できて初めて還金されるものです。
なので、債務者の財産の場所や金額を知らないと、強制執行してもお金は戻ってこないのです。
更に言うと、使用済みの事務用品などを差し押さえ出来ても、ほとんどお金にならないそうです。
1番現実的なのは、債務者の銀行口座とお金が入っている時期を特定しておき、銀行口座を抑えることらしいです。
 
苦労して面倒臭い裁判に勝っても、強制執行で更に費用も時間もかかるなんて本末転倒です。 
多くの賢い被害者は、請求金額とそれを回収する費用や労力を天秤にかけた結果、
訴えることも無く、泣き寝入りすることが多いようです。

という訳で、今後、同じような立場の方がこのようなトラブルに巻き込まれないために、
今回の体験をデザイナーの視点と裁判所の意見を交えて、書いてみたいと思います。



概要を時系列で書きます。(要点だけ理解されたい方は、ページ下部へ。) 
 
登場人物
G社のO氏:異業種交流会で知り合う。仕事の発注元。短期間A社の代表取締役でもあった(後に判明)
A社のS氏:O氏が商品の販売先として考えいたビジネスパートナー。請求先。O氏後の代表取締役

①デザイン受注~納品まで 
2011年9月末、異業種交流会で知り合ったG社のO氏より、急ぎの仕事を口頭で依頼される。
何より急ぎということで、2週間ほぼ丸々O氏以来のデザインに取り掛かかる。

打合せには、発注元であるG社のO氏、販売先であるA社のS氏も参加しており、
特に問題も無く、先方で確認が必要な文言のみ残してデザイン作業は終了。
10月14日、O氏のお願いで、G社から受けた仕事をA社へ請求。
(O氏の思惑では、A社のS氏に支払って貰う気だったっぽい)

②支払い無し・連絡無し
支払約束日の10月末になっても支払がないため、O氏に連絡を取るが、
のらりくらりとかわされ、次第にメールや電話を無視される状態が続く。
(デザイン作業中は毎日連絡アリ)

年明け、業を煮やして、法的手段に出るとのメールを送ったところ、速攻で返事アリ(笑)
O氏曰く、販売先予定であったA社が外れ、O氏個人からの支払いになるので待って欲しいとのこと。
既に、先方の事情を汲んで汲んで3ヶ月だったので、泣きは受け入れず。
1月末に支払期限を設定も、支払がなかったため、簡易裁判所へ。

③簡易裁判所へ
簡易裁判所に行くと、主に4つの手段で解決を促されます。

調停:調停委員を入れ、話し合いにより和解を目指す。呼びだしに法的拘束力は無い。
支払督促:書面だけで金銭請求を行う手続き。面倒なのは、債務者の管轄である裁判所で手続きをしなければならない。
小額訴訟:60万円以下の金銭請求を行う手続き。
通常訴訟:通常の訴訟。手続き的には、小額訴訟と変わらないらしい。

相談に行く度に、どの方法で相手を追い詰めるか迷う迷う(笑)
結局、3度も相談に足を運び、最終的に下記要点を考慮して、
請求先であるA社相手に支払督促支払い督促を実行。

○調停では無視される可能性がある
○小額訴訟・訴訟は若干手続きが面倒臭く、費用もそれなりにかかる。
○O氏個人相手に支払督促をするには、O氏の住む三重県の裁判所で手続きをする必要があるため、
所在地が大阪のA社へ支払い督促。
○支払い督促状でビビって払ってもらえれば、良いと考えていた。
○O氏とS氏の仕事関係(O氏<S氏=偉い)を刺激して、どちらからでも支払いがあれば良かった。

④A社からの異議申立て
1月末に送った支払い督促状に対し、2月頭、A社から異議申し立てアリ。
内容的には「そんな仕事は頼んでいない、請求書も知らない」 とのこと。
O氏からは焦った感じでメールがあり「約束破り」と呼ばれる(笑)。
(A社のS氏と一悶着あったのか、こちらの目論見通り)


正直、訴訟へ移行しても構わないと思っていたので、豊中商工会議所の法律無料相談所に相談。
所持している物的証拠を見て頂いた結果・・・
○請求額が少ない(請求額より裁判費用の方がかかる)
○契約書が無い(業務内容に関しての指示メールでは弱い)
A社、G社、どちらの会社から仕事を請けたのか証明出来ない
との理由で、A社を相手に裁判で勝つのは難しいとの判断。
結果、O氏をなだめすかして支払って貰う方向へ転換。 

⑤O氏への譲歩・支払いへ
この時点で、A社から支払って貰える可能性は低かった。
かと言って払う払う詐欺のO氏への信用はゼロだったので、
ひとまず、裁判後に強制執行が出来るように、 O氏の銀行口座を把握する作戦へ。
支払い督促の取り下げと支払い条件の譲歩を餌に、小額を払って貰い銀行口座を掌握。
O氏より3月5日迄に、残額を支払うとの申し出があり承諾。
3月5日、支払いも連絡もなく、再度、訴訟へ移行する旨のメールを送信
(通常、異議申立てから訴訟手続へ移行する期間は決まっているが、裁判所へ事情を話し期間を延長してもらっていた。)
3月7日、O氏から残金の支払いを受け、無事に回収終了。
3月14日、支払い督促を取り下げ、一件落着。


最後の最後まで、小さい約束を破り続け、連絡さえよこさないO氏。
そんなO氏と、支払い後のメールやりとり(中略)

O氏
南さんはもっと人を見た方が良いです。
本当の付き合いは、これからスタートでしょ。
人間として幅広い気持ち、心構えが必要です。

仰る内容は、その通りだと思います。
ただ内容に説得力があるかないかは、仰る方の信用次第だと思います。
個人的には、小さい約束さえ守れず、事前にご連絡を頂けない方は信用出来ません。
年上の方に大変失礼なのは承知しておりますが、Oさんこそ、
日頃の行動を見直されてはいかがでしょうか?

O氏
細かい事だけでは、人は判断出来ない場合があるよ。
目先や一時的だけで決めては間違いが生じる事があります。
<<よーく考えて下さい。>>

そうですね。


大人気ないかなとは思いつつ、何度読んでも腹が立つんで晒します(笑)
まぁ、決して極悪人という感じの方ではないですが、正直一番嫌いなタイプです。
当人は、これからが本当の付き合いだ!!みたいに意気込んでますが、
個人的に今後のお付き合いは200%無いです。


いつものように長くなりましたが、まとめます。

トラブルにならないために注意すべきポイント
■契約書(もしくは覚書)の締結と契約内容
○誰が誰に発注したか
○デザイン料金
○支払い期日
○納期
○納品形態(何を持ってデザイン業務の完了と見なすか)
■契約書や覚書が無理な場合、上記内容を書いた相手方からのメール
■銀行口座を押さえる(信用調査や後の強制執行に備えて)
■請求書は内容証明郵便で送る


回収にかかった費用と時間
○回収期間:5ヶ月
○支払督促申立費用:¥3130 
○登記簿謄本:¥1400
○交通費:¥2340(簡易裁判所へ3回、法務局へ1回)
○簡易裁判所への相談:3回(各1時間程度)
○無料法律相談への相談:1時間
○その他費やした時間:10時間以上(書類準備・移動時間など)

羅列すると大した金額、時間ではないですが、
忙しい時期に、振り回されたのは、正直面倒でした。
第一、こちらは悪いことは何一つしてない訳ですから。


今回、請求金額云々ではなく、O氏の度重なる不誠実な態度に我慢ならないところがあり、
愚直だとは思いつつも、法的手段を使って、筋を通すことにしました。
冒頭でも書きましたが、現在の法律は、面倒な手順が多く、結果として債務者の味方です。
特に力の弱いフリーランスは、仕事を始める前にしっかりと自己防衛するしかなさそうです。

今回の騒動を通して、一番痛感したのが「信頼を失うのは一瞬」ということ。
私も、遅刻癖という悪い癖があります。
O氏にとっては、些細なことであった、支払い遅れ、連絡無視、連絡なしという行為が、
私にとって一瞬で信頼を失う行為であったように、
遅刻という行為が信頼を失うことがあるという事を、
しっかりと肝に銘じて仕事に励もうと思う今日この頃です。